こんにちは!食材デポ編集部の泉山です。
飲食店の最大の課題とも言うべき食品ロス。日本政府も2019年5月24日から食品ロス削減推進法を施行して本格的に力を入れ始めたテーマでもあり、今後の飲食店支援に向けての取り組みの一つとして重要視されていくと思います。しかし、飲食店経営者として食品ロスを意識しつつも具体的な対策は取れていないのが現状。そこで今回は、その現状と対策について一緒に考えていきたいと思います。
飲食店の食品ロスの現状
農林水産省が発表した平成29年度推計値をもとに、本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の現状を見ていきましょう。
国内での年間食品ロス 612万t
食品ロスは大きく分けると2つの分類に分けることが出来ます。
● 各家庭から発生する 家庭系食品ロス
家庭=284(46%)
● 事業活動を伴って発生する 事業系食品ロス
外食産業=127(21%)
食品製造業=121(20%)
食品小売業=64(10%)
食品卸売業=16(3%)
国民1人当たりの食品ロス量は1年間で約48kgにものぼり、これは1人当たりが毎日お茶碗一杯分の食品を捨てていることになります。
食料自給率が40%にも満たない日本にとって、本来食べられるのに捨てられる食品がこれほどあるという事実は、国にとっても大きな課題と言えるでしょう。
食品ロスの原因はなに?
では、なぜ飲食店では食品ロスが出るのでしょうか?主な3つの発生理由について解説していきましょう。
Reason.1 食品廃棄ロス
飲食店による食品ロスの中でも最も多いのが廃棄ロス。販売予定より過剰な仕入れにより消費期限内に使いきれなかった食材や、お客さまが食べきれなかった料理、売れ残ったテイクアウト食品など、本来食べられるのに捨てられる食品を指します。
Reason.2 オーバーポーションロス
飲食店におけるポーションとは、提供する食事の分量のこと。(1皿分の分量)事前に設定したポーションよりも多めに盛り付けることをオーバーポーションといい、必要以上のサービスにより原価率が上げると同時に廃棄ロスにつながります。
Reason.3 人的ミスによるロス
食材の発注ミスや料理のオーダーミス・調理ミス・食材管理もれによる消費期限切れなど、飲食店スタッフによるミスの積み重ねが食品ロスの原因の一つと考えられます。
食品ロス削減によるメリットとは
食品ロスの削減が、社会問題解決にもつながりお店のメリットになることはお分かりだと思います。では具体的なロス率を例にして経営的な観点から、その食品ロスがもたらす店舗へのFLコストとロス削減によるメリットを解説しますので、ご自分のお店がどういう状況なのか当てはめてみてください。
ロス率=ロス高÷売上高×100
例えば、月の売り上げが230万円で食品ロスが15万円だとすると
15÷230×100=6.5%になります。
食品ロス率の目標目安は5%以下とされていますので、FLコストが高いとなります。
FLコスト=材料費(Food)+人件費(Labor)
材料費が70万円で人件費が90万円だとすると
70+90=160万円になります。
FL比率=材料費(Food)+人件費(Labor)÷売上高
材料費が70万円で人件費が90万円で売上高が230万円だとすると
70+90÷230=69.6%になります。
FL比率の平均値は55%~65%とされていますので、利益率がかなり低いとなり経営の継続は厳しいです。FLコストの管理を行い無駄な経費を削減していく上で食品ロスの削減こそが大きなメリットにつながると言えるでしょう。
飲食店にできる食品ロスの削減!
それでは、実際に食品ロス削減のために飲食店ができることを学んでいきたいと思います。その前に毎日の食品廃棄量を把握することが大切です。廃棄量が多いことは分かっていても、その具体的な食材ごとの量は把握していない場合が多いです。廃棄量を数値化して管理ことで、何の廃棄の傾向が多いのか、それにかかっている経費が明確になり、食品ロス削減のための具体的な対策ができるようになります。
冷凍食材の活用で食材を長持ちさせる
品質や味へのこだわりを持つことは飲食店にとって最も大切な要素の一つですので生鮮食品の活用は必須ですが、廃棄されては元も子もありません。冷凍野菜・冷凍果物など冷凍技術の進化により、食材の品質ダウンは抑えられていますので、是非ご活用ください。
契約農家などからの規格外商品仕入れ
規格外とは、形が悪かったり規定量よりサイズが大きい小さいなどの理由で販売できなかったものなので、味や品質は変わらないのです。また、そうした食材は通常より3~4割安く仕入れられることが多いので飲食店にとってもありがたく、農家さんの食品ロス削減にも貢献できます。
食材管理の見直しで消費期限切れ0
食材を保管する冷蔵庫や食材庫内を見える化した状態にする。食材の種類・消費期限ごとに置く場所を決めて消費期限を分かりやすくて記入しておく、それにより古いものから消費期限内に使用するくせが付き、消費期限切れが防げます。
過剰な仕込みを避ける
まずは、日々異なってくる適正な仕込み量を週単位で(年間を通して)把握することが基本。作り過ぎてしまった場合は、次から量を減らすようにしましょう。メニューによっては注文を受けてから調理するようにできないか検討し、業務効率化を図る上で必要なバランスを取りながら仕込み量を調整していくことが大切です。
食べ残しの事前対策
少量メニューの開発や、主食であるご飯やパンは女性客やお年寄りに合わせて食べきる量を選べるようにして、食べ残しのない注文を促す工夫がポイントです。同時に、刺身のお造りなどに盛り付けられる海藻やつまや大葉などは、残される可能性が高いので少なめに盛り付けておく。
食べ切れなかった料理の持ち帰りサービス
お客さまが手をつけす、食べきれなかった料理を持ち帰れるようにテイクアウトできる準備をしておくことサービスの一つです。特に生鮮食品を取り扱う飲食店では、食中毒など衛生上の問題が懸念されますので慎重に検討するべきです。例えば、持ち帰れる料理を生鮮食品以外に限定して食中毒のリスクを避ける手段もあるようです。
フードシェアリングサービス
フードシェアリングサービスとは、作りすぎや売れ残りで廃棄されてしまう商品を割安価格で提供するサービスです。メニューの原価率をコントロールすることができ、新しい販促ツールとしても今後期待できます。
まとめ
食品ロスは、飲食店の経営を締め付けるだけでなく社会全体の課題としても考えるべき大きな問題です。問題解決の糸口は、飲食店の努力に尽きるのではなくお客さまにも理解していただき協力してもらうことも必要です。そうした取り組みが社会全体で食品ロスを削減していく動きとなることを切に願います。