【インタビュー】都城から世界へ、南九州の素材の味を届けたい【ヤマエ食品工業株式会社】
2023/09/08 00:00
今回お話を伺うのは、宮崎県都城市で醤油や味噌をはじめ麺つゆやポン酢など、南九州の特産品を利用した食品製造・研究開発を行なっている「ヤマエ食品工業株式会社」で企画・広報を担当されている山下郁美さん。 醤油や味噌、大人気の「高千穂峡つゆ」の他にも新たな調味料を開発し、都城から日本全国に留まらず、世界中へ販路を拡大されています。

企画部営業企画課 山下郁美様

南九州の特産品を活かした商品開発

-- 事業内容について教えてください。 山下さん:弊社は明治4年に、水と自然に恵まれた銘醸の地「宮崎県都城市」で醤油・味噌の醸造業として創業いたしました。その後、昭和41年に現在の「ヤマエ食品工業」へ改称し今年で創業152年目となります。 醤油や味噌の製造を中心に行なっていますが、その他様々な種類の調味料も製造・開発しております。中でも「高千穂峡つゆ」は、販売から30周年を迎えるベストセラー商品となっており、たくさんのお客様にご購入いただいています。 「高千穂めんつゆ」は現在4シリーズを展開しており、「高千穂峡つゆ」を活用した白だしも作っています。めんつゆ以外ですと、今年3月には新商品として「おろししょうがのたれ」「おろしにんにくのたれ」も発売していますが、その他にも、ドレッシングやタルタルソースやなども作っています。最近ですと宮崎が「餃子」で有名になりましたので、辛味噌の製造・販売にも手がけています。 また、都城は「鹿児島県」に近いので、西郷隆盛が味噌を作る名人だったことにちなんで「西郷どん味噌」を作っています。また、その味噌を活かして、ご飯・おにぎりにつける「おにぎり黒豚味噌」も作るなど、1つの商品を元に様々な商品を展開しています。 また、弊社代表が「宮崎の輸出産業を進める会」の会長を務めており、そういった経緯もあって輸出事業にも力を入れております。すでに輸出実績もあり、例えば先程の「おにぎり黒豚味噌」を進化させて、お肉の部分を大豆にした「大豆ミート味噌」をアメリカ、アジア圏内(シンガポール、韓国、台湾、香港)を中心に販売させていただいております。 「宮崎の輸出産業を進める会」は醤油・味噌はヤマエ食品が担当しており、その他の業者様と被らないようにしております。そういった形で、海外の展示会に参加し、販路を増やしております。 今年4月には、更に輸出事業に力を入れるために初めての外国人採用を行い、ドイツ出身の方を1名採用しました。この方は本日も東京に出張しておりまして、今度ドイツの展示会「アヌーガ」にも参加する予定です。 -- 製造過程、生産プロセスについて教えてください。 山下さん:製造過程についてですが、お味噌を保管している場所では、味噌に音楽を聴かせています。ピアノのある一定の音色を聴かせていますが、ピアノの音を聞いていると寝てしまいそうですよね(笑) 人間が心地いい音楽でリラックスするように、味噌も音楽によってリラックスするそうです。この音楽を聴かせる方法は、牛でもお酒でも色々なところで行われているそうです。 こういった情報は、お取引先様や生産者様など様々な人との繋がりから提供して貰うのですが、お話を聞いた時に「まずは試してみよう」の精神で行い、それで良い結果であればどんどん取り入れています。 -- 市販用、業務用と商品を取り扱っていますが、その中でもイチオシの商品を教えてください。 山下さん:どの商品にも言えるのですが、現状、味噌と醤油を取り巻く環境が芳しくないです。原材料の価格上昇に加え、そのほかにもペットボトルなどの資材類も非常に高騰していることから、弊社でも商品を値上げせざるを得ない状況です。 また、醤油や味噌汁の消費量も減ってきています。例えば、2世帯だったり、1回の調理で10人分など調理する方なら、1リットルの醤油を使うのでしょうが、1世帯(3人や4人家族)や一人暮らしですと1リットルの醤油を買われることが少なくて、350mlなど少量タイプの醤油の方が需要があります。 こういった理由から味噌と醤油の消費の落ち込みはありますね。 弊社でも今後は、350ml入りやスパウトタイプの商品に力を入れていく方向です。スパウトタイプは、持ち運びやすく、使いやすい為、今後はこのタイプの容器も増えていくかと思います。お味噌と醤油の消費量は減っているため、一人暮らしなどの方に向けてフリーズドライ味噌汁も取り扱っています。 -- 商品の開発、企画についてお聞かせください。 山下さん:弊社では、月に1回新商品会議を行っております。社内に開発部がありますので、各ブロックのブロック長が参加し「関東ではこういう味が流行っている」「県外で容器を小さくしてほしいと要望があった」などの意見交換を行い、年に2回は必ず新商品を販売しております。 今年であれば、3月に「おろしニンニクのたれ」「おろししょうがのたれ」が新しく発売したのと、9月にも新商品の発売を控えております。この場では、お伝えすることができないのが心苦しいです。 また、「高千穂峡のつゆ」も味の微調整を行いながら販売しております。 地球温暖化をはじめ、昔に比べると気温も高くなっており、気温が高くなると人は甘い物を欲しがるようになるそうです。その為、少しずつですが、つゆを甘くしたり、さらに「高千穂峡のつゆ 甘口」も販売しています。これも少しずつ人気が高くなっています。逆に「高千穂峡のつゆ あごだし」は甘さはなく、控えめな味にしています。 -- ヤマエ食品工業としての展望をお聞かせください。 山下さん:ヤマエ食品には良い商品がたくさんあります。以前、商品のグランプリを取った際にもご指摘いただいたのですが、もっとPRの仕方を工夫した方がいいと指摘された部分がありましたので私自身も企画・広報担当でありますので、去年から、ヤマエ公式インスタグラムを含むSNSでの情報発信に力を入れております。 ですので、昔ながらのPRの手法に加えて、現代にあったPR方法を模索しながら取り組んでおります。商品パッケージにつきましても、社内で協議しながら、昔ながらのパッケージの良さを取り入れて新商品に反映・融合させながら販売に繋げていければと思います。