【インタビュー】伝統の良さを守りつつ、お客様が満足できる製品造り【株式会社太陽漬物】
2020/06/26 00:00
今回お話を伺うのは、鹿児島県曽於市で沢庵漬の製造販売を行なっている「株式会社太陽漬物」代表の 野左根 健 さん、販売部の 亀沢 陽一郎 さん。 南九州の特産品である干し大根を使った干し沢庵を中心に、様々な漬物を取り扱っており、九州だけでなく首都圏にも販路を拡大しています。

代表取締役 野左根 健 氏

原料の栽培管理から販売までを一貫生産、安心・安全な沢庵を全国へ

-- 事業内容について教えてください。 野左根:昭和50年に創業をしまして、45年目になります。沢庵漬の商品を製造販売を中心に行っています。沢庵は干し沢庵、塩押 沢庵です。関東の方だと、干し大根が認知されていないみたいです。その他には、大根を仕入れる際に折れたり、割れたりして1本の沢庵にならないものを福神漬け、つぼ漬として利用しています。本来であれば廃棄されてしまうような大根を刻み、製品として作っています。現在は125名が働いており、女性が8割で女性を中心とした職場だと思います。沢庵を作っている会社で100名以上雇用するところは珍しいそうで、たくあんを手軽にまた買ってもらえるような製品づくりを心がけていて、安定して注文がある状況です。 -- 大根を干したものと干さないもので、なにか特徴が変わりますか? 野左根:歯切れが変わってきますね。干さない生の場合はフレッシュな感じです。一方干し沢庵は、大根を洗い、櫓(やぐら)で2週間干します。干すことにより、大根の水分が7割ほど飛び、本来の3割分の重量になります。そうすると、大根の美味しさがぎゅっと詰まって、更に歯切れが強く、ぱりぱりとした食感になります。美味しさは干し沢庵の方が良いですね。干し沢庵は南九州だけでしか作っていませんので、宮崎・鹿児島の特産品です。 -- 商品のこだわりを教えてください。 野左根:私どもの会社は、原料の栽培、種の選定から農家の方に品種の種を蒔いて大根作りをしていただき、それを買い入れて自分のところで漬けます。その作業を元漬けと言うのですが、その作業を経て製品にし、そこから販売までの原料の栽培管理から販売まで一貫生産を行い、北海道から沖縄まで全国販売をしています。また、沢庵というのは押しが命で、重石でぎゅっと押さないとパリパリとせずサクサクとした食感になり美味しくなくなってしまいます。重石をかけると大根は小さくなりますが、その分沢庵特有のパリパリとした食感が出てくるんです。自分のところでつけるのを自家漬けといいますが、それが約95%の割合で自分たちで一生懸命作っています。

販売部 亀沢 陽一郎 氏

-- 会社の取り組みについて教えてください。 亀沢:農家が少なくなっている今、我々メーカーが銀行の役割のようにお金を先払いしないと廃業してしまうため食い止めています。後継者がおらず、現役の人も7、80代の方でいつやめてもおかしくないです。我々が最後の砦です。農家の方がいなくなると漬物が世界からもなくなってしまいます。日本の伝統文化でもあるので、他国では土や水質も違うため同じ味が出せないと思います。 野左根:メーカーが支援しなければ現在では日本にも数社しか残っておらず家族経営のような個人での企業では収量も少ないです。特に業務用の漬物などは外国産の方が安く顧客ニーズが多いです。そういったニーズにも応えつつ、こだわりを持ったお客様もいらっしゃいますので、そういったものを見極めて求められているところに商品を売り出すべきだと思っています。ネット販売ではそういった面で訴求していきたいと考えています。県外だけでなく地元の方にも土地のものを届けたいという思いもあります。 -- 今後の展望についてお聞かせください。 野左根:生産者である農家の方には、作っていただいた大根で採算がとれるよう、また再生産が出来るようにしたいです。農業を維持するということだけでも大変なことですから、毎年一定の量をいつまでも作ることができるようにしてあげたいです。焼酎芋なんかは焼酎ブームが去り1割減販、昨年はさらに2割も減販しました。そうなると農家の方の収入が減ってしまうのです。ハイボールやワインなどに転換され、需要が減ってきている中でその原料であるさつまいもが要らなくなる状況になっています。また、商品のほうについては沢庵の美味しさを皆様にさらに知ってもらいたいと同時に、味のばらつきがないようにしたいです。沢庵の作り方は穴埋め的な問題がありますので、いつ食べても美味しいと感じてもらえるようにしたいです。それは伝統ある食品のなかで沢庵というものを守っていくことにつながると思います。