今更聞けない、インボイス制度による飲食店への影響と対策
2023/12/07 00:00
こんにちは!食材デポ編集部のデポ太郎です。 2023年10月よりインボイス制度がスタートしました。飲食店においても、標準税率と軽減税率の両方を取り扱う機会が多いため、制度の概要や想定される影響について知っておく必要があるでしょう。今回の記事では、インボイス制度の仕組みや飲食店が受ける影響、必要な準備について解説します。インボイス制度についてまだあまり理解できていないという飲食店の方は、ぜひ参考にしてみてください。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の新方式のことです。2023年10月より施行され、正式名称は「適格請求書等保存方式」と言います。 これまでの制度では、売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を控除するには、区分記載請求書等と帳簿の保存が必要です。しかし、現行のインボイス制度では区分記載請求書等に代わり、適格請求書の保存が必要となります。適格請求書の記載内容や発行できる条件について、次に解説します。 適格請求書(インボイス)とは 適格請求書に記載しなければならない事項は以下の通りとなります。 ・適格請求書発行事業者名および登録番号 ・取引年月日 ・取引内容(軽減税率の対象品目は印をつけて判別できるようにする) ・税率ごと(8%・10%)に分けた合計額(税抜きまたは税込み)と適用税率 ・税率ごと(8%・10%)に分けた消費税の合計額 ・発行先の事業者名 適格請求書発行事業者になるには、課税事業者であることが条件としてあり、なおかつ税務署に適格請求書発行事業者の登録申請をしなくてはなりません。 つまり、適格請求書は誰でも発行できるわけではなく、上述の条件を満たした事業者でないと発行ができないというのが、今回の大きな改正ポイントとなります。 インボイス制度の目的 2019年10月1日に消費税が10%と引き上げになった際、飲食料品(酒類・外食を除く)や新聞には8%の軽減税率が適用されることになりました。10%と8%の複数税率ができたことによって、消費税納税の不正や取引の不透明さを防止する目的から、インボイス制度が導入されることになったのです。 具体的な例として、「益税」が問題になってきました。益税とは「納税免除や軽減などで、消費者が支払った消費税の一部が納税されず、事業者の手元に残ったお金」のことです。益税には以下のような問題があるため、これを解消するため新たにインボイス制度が作られました。 ・免税事業者は消費税を納める義務がないが、課税事業者は納めなくてはならない。 ・簡易課税制度下で消費税の概算を算出すると、本来納付する消費税額と差が出てしまう。 ・軽減税率が導入され、税率ごとに記載された請求書がないと正確な消費税額の計算と仕入税額控除ができない。

インボイス制度による飲食店への影響

飲食店にとってインボイス制度は、仕入とサービス提供の両方で影響があることが想定されます。具体的にどのようなことが想定されるのが、次に詳しくみていきましょう。 仕入先が適格請求書発行事業者でなければ仕入税額控除が受けられない 仕入税額控除を受けるにあたり適格請求書が必要となるため、食材等の仕入先が適格請求書発行事業者であるか確認しなくてはならない。仕入先が免税事業者である場合は、適格請求書を発行できませんので注意しなくてはなりません。 免税事業者が適格請求書を発行するには課税事業者になれば良いのですが、消費税納税の義務が生じて売上が減少することから、免税事業者から課税事業者になるのはそう容易いことではありません。ただし、インボイス制度開始後6年間は経過措置として、取引先が免税事業者であっても、一定の割合で仕入税額控除を受けることができます。 適格請求書を発行できないと顧客が減る恐れがある 売り手は、買い手の求めに応じて適格請求書を発行する義務があります。適格請求書を発行できないと、その後の取引を打ち切られるなど影響が生じる恐れがあるのです。たとえば、顧客の大半が一般の消費者であれば、適格請求書を発行できなくとも影響は少ないでしょう。 しかし、接待などで利用する法人が顧客の中に多い場合は、適格請求書を発行できないと、他店へ顧客が流れる可能性がでてきます。 その場合には、適格請求書発行事業者への変更も視野に入れて、今後の対策を慎重に検討しなくてはならないでしょう。 経理業務が今よりも煩雑となる 仕入税額控除を受けるには、適格請求書の保存だけでなく帳簿の保存も必要となります。そのため、帳簿もインボイス制度に則って作成されていなければいけません。また、受け取る請求書も、適格請求書とそうでない請求書をチェックする作業も必要となることから、今までよりも業務が煩雑となるでしょう。 他にも、既に導入している会計システムがインボイス制度に未対応であれば、システムを改修もしくは新しくシステムを入れ直す必要もでてくるため、コストがかかる可能性もあるのです。そのため、経理業務や現行のシステムを見直しする必要があるでしょう。

インボイス制度に対応するために飲食店が準備すべきこと

事前にしっかり準備を整えることで、インボイス制度が開始した際にスムーズに対応することができるでしょう。ここでは、飲食店が準備すべきことについて解説します。 適格請求書発行事業者になる手続きの流れを把握する 適格請求書発行事業者になるには、所定の申請用紙に記入の上、納税地を所轄する税務署に持参または送付します。申請用紙については、国税庁のホームページよりダウンロードが可能です。前述以外の方法では、e-Taxからも登録申請手続きを行うこともできます。 レシートを簡易適格請求書の様式に変更する 不特定多数の者に販売を行う特定の業種に関しては、簡易適格請求書の発行が認められています。飲食業も特定の業種に含まれるため、簡易適格請求書の発行が可能です。簡易適格請求書の記載事項については、以下の通りとなります。 ・適格請求書発行事業者名および登録番号 ・取引年月日 ・取引内容(軽減税率の対象品目は印をつけて判別できるようにする) ・税率ごと(8%・10%)に分けた合計額(税抜きまたは税込み)と適用税率 ・税率ごと(8%・10%)に分けた消費税の合計額または適用税率 店舗で発行するレシートを上述の記載事項に合わせることで、簡易適格請求書として扱うことができます。 インボイス制度に対応した会計システムを導入する インボイス制度開始後は経理業務の煩雑化が進みますが、人的補充が難しい場合はインボイス制度に対応した会計システムの導入を検討しても良いでしょう。 多くのシステム会社からインボイス制度に対応した会計システムがリリースされており、中には無料体験版が用意されているものもあります。体験版で試してから、自社の経理業務にあったものを見つけると良いでしょう。 免税事業者・課税事業者どちらで営業するか考える インボイス制度導入にあたって、課税事業者になるのか、それとも免税事業者のままでいるのか選択しなくてはなりません。取引先やお客さまが減ってしまう可能性はありますが、免税事業者のままでいることも可能です。 インボイス制度が始まって最初の6年間は経過措置期間のため、買い手側は前半3年間は8割、残り3年間は5割の仕入税額控除を受けられます。そのため、すぐに取引先が減ることはないかもしれません。しかし、遅くともその間に対応する必要があるでしょう。

インボイス制度による飲食店の対策のまとめ

インボイス制度の導入によって、飲食店においても様々な影響が想定されます。取引先によっては仕入税額控除が受けられない可能性や、適格請求書に対応できないことによる顧客離れなど、いずれも売上の減少につながる重大な影響です。 これらの影響を受けないためには、インボイス制度の概要や手続について把握し、開始までの間にしっかり準備を整えておくことが大切でしょう。 飲食店も課税事業者となるかどうかの選択や請求書への項目追加など、さまざまな準備が必要です。飲食店は、「適格簡易請求書」(簡易インボイス)の発行ができます。それでも、消費税額の計算が必要になるなど、経理業務が複雑になることは避けられません。経理業務の負担を少しでも軽くできるよう、インボイス制度に対応している会計ソフトを利用することも業務効率化につながりますので、ご検討されてはいかがでしょうか。